研究概要 |
バングラデシュの洪水は,国家的現模の水害と毎年のように発生する通常年の洪水に分けて考えることができる.国家的規模の洪水に対しては抜本的な対策が不可欠であるが,通常年の洪水は,水資源・交通・運搬手段・漁業・環境浄化などに利用され,住民生活と密接に関連を有している.したがって,このような洪水の持つ利点を無視して洪水対策を立案することは好ましくない. 本研究では,通常年の洪水と全国的規模の水害を区別し,それぞれの発生機構を明らかにする.さらに,洪水と人間生活との関係を調査して,洪水災害防止軽減法を立案する際に必要な基本的事項を究明し,バングラデシュ国の発展のための基礎資料を提供することを目的とする.本年度は次の3項目について調査研究を行った. 1.水文観測・現地調査:これまでバングラデシュ北東部に水文観測施設を設置して観測を実施してきた.これらの水文観測をバングラデシュ工科大学の共同研究者と協力して継続し,研究資料の充実を図った. バングラデシュ北東部には,無数の氾濫湖が存在するが,最大のハカルキハオールにおいて氾濫湖の拡大・縮小過程を,現地調査・数値シミュレーションを行なって明らかにした. 2.降雨分布の推定法:バングラデシュには,チベット・ネパール・ブータン・インドより全体の95%水が流入する.バングラデシュの洪水流出機構を解明するためにはこれらの地域の雨量を明確にすることが必須条件である.本研究では,最近我が国によって供与されたレーダを用いて推定された雨量と本研究で観測している雨量とを比較し,レーダの適応性を吟味するとともに,インド領内の降雨の推定を試みた. 3.洪水流出・氾濫解析:上述の調査結果と雨量資料に基づいて,洪水流出解析を行なって氾濫湖への流入量を明らかにした.さらに,差分モデルを適用して二次元氾濫解析を行い2001年6月のモヌ川洪水氾濫過程を明らかにした.
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