研究概要 |
バングラデシュの洪水は,国家的規模の水害と毎年のように発生する通常年の洪水に分けて考えることができる.国家的規模の洪水に対しては抜本的な対策が不可欠であるが,通常年の洪水は,水資源・交通・運搬手段・漁業・環境浄化などに利用され,住民生活と密接に関連を有している.したがって,このような洪水の持つ利点を無視して洪水対策を立案することは好ましくない. 本研究では,通常年の洪水と全国的規模の水害を区別し,それぞれの発生機構を明らかにする.さらに,洪水と人間生活との関係を調査して,洪水災害防止軽減法を立案する際に必要な基本的事項を究明し,バングラデシュ国の発展のための基礎資料を提供することを目的とする.本年度は次の3項目について調査研究を行った. 1.水文観測・現地調査:これまでバングラデシュ北東部に水文観測施設を設置して観測を実施してきた.これらの水文観測をバングラデシュ工科大学の共同研究者と協力して継続し,研究資料の充実を図った. 2.洪水流出・氾濫解析:上述の調査観測結果と雨量資料に基づいて,メグナ河上流域・メガラヤ山脈・トリプラ高地について雨水流出解析を行い,未解明であったバングラデシュへの雨水流入機構を明らかにした.さらに,北東部低平地の氾濫解析を行い,氾濫湖の消長と洪水災害との関連性を明らかにした. 3.氾濫湖の消長と住民生活調査:雨季に湖のように広がるバングラデシュ洪水氾濫は住民生活と密接に関連しているが,氾濫湖周辺で商業活動が活発化するに伴い,環境の悪化をもたらしている.インタビュー調査と水質測定を行い,環境とくに氾濫湖の水質との関連より地元住民が望む洪水対策のあり方について検討を行った.その結果,小規模の溜池に依存している生活用水の改善が緊急対策として必要であることが明らかになった.
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