研究概要 |
バングラデシュの洪水は国家的規模の水害と毎年のように発生する通常年の洪水に分けて考えることができる.国家的規模の洪水に対しては抜本的な対策が不可欠である.しかし,通常年の洪水は,水資源・交通・運搬手段・漁業・環境浄化などに利用され,住民生活と密接に関連を有している.したがって,このような洪水の持つ利点を無視して洪水対策を立案することは好ましくない. 本研究では,通常年の洪水と全国的規模の水害を区別し,それぞれの発生機構を明らかにする.さらに,洪水と人間生活との関係を調査して,洪水災害防止軽減法を立案する際に必要な基本的事項を究明し,バングラデシュ国の発展のための基礎資料を提供することを目的とする. 本プロジェクトでは次の4項目について集中的に調査研究を行った. 1.洪水流出解析:既存の雨量資料を収集・整理して,メグナ河上流域・メガラヤ山脈・トリブラ高地について雨水流出解析を行い,未解明であった国外よりバングラデシュへの雨水流入機構を明らかにした. 2.モヌ河流域におけるflash floodの解析:2001年6月5・6日に,モヌ河で鉄砲水により堤防が決壊した.現地調査・流出解析と洪水解析を行って現象を解明するとともに,洪水対策として堤防の強化・セットバックの必要性・堤防上の構造物の除去が必要であることなどを指摘した. 3.北東部における氾濫湖の消長に関する数値シミュレーション:北東部低平地について氾濫解析を行い,氾濫湖の消長と洪水災害との関連性を明らかにした. 4.氾濫湖の消長と住民生活調査:インタビュー調査と水質測定を行い,環境とくに氾濫湖の水質との関連より地元住民が望む洪水対策のあり方について検討を行った.その結果,小規模の溜池に依存している生活用水の改善が緊急対策として必要であることが明らかになった.
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