研究概要 |
1.中国ウイグル自治区(タリム川河口区:楼蘭,クシャ等のタクラマカン砂漠東部)においてキョウチクトウ科の紅麻(Apocynum venetum)と白麻(Poacynum hendersonii)の生育地調査を実施した。中国には総称して羅布麻(Lobuma)呼ばれるいくつかの属が生息することが知られているが,調査地点で採取された種は全て,上記の2属であると同定された。 2.タクラマカン砂漠東部においてはタリム川流域の河口に存在する胡陽(ポプラの一種)潅木群落の中に,紅麻は比較的水分の多い河川堤防敷などに優占した小群落を形成し他の潅木類と混生して生育した。白麻は乾燥度の高い塩分が集積した箇所に生育し,特に砂漠との境界領域に生育していた。群落高は共に1m未満であった。紅麻・白麻の根系を調査した結果,ほとんどの個体が根萌芽で増殖していることが確認された。紅麻数個体を伐採し,成長速度を調査した結果,5年生で平均根元径15mm,樹高0.5m程度に成長していることがわかった。また,白麻についても伐採した結果は同様であった。また,両種の群落は山羊の食害を受けていることが確認された。 3.紅麻の栽培:採取した種子を散布して自然発芽させ,苗木を育成した。無管理・無施肥で栽培したところ1年間で約0.5mの成長が認められた。食品原料や繊維原料など利用が期待される。 白麻の栽培:白麻の種子を畑作栽培地に自然発芽させたところ,発芽はしたもの生育しなかった。これは白麻が環境の劣悪な箇所へのパイオニア種であって,畑作地などの開墾地には不適であることを示していた。
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