研究概要 |
本研究の目的は現在及び過去の熱水系におけるシリカシンターの沈積現象の特徴付けに焦点を置いている.岩石中の熱水流路として働くき裂の内部に生じるシリカシンターや石英の沈積現象について理解する事は,地熱や鉱産資源開発に対する有用なツールとして将来性があるためである.しかしながら,現在のところ,それらの現象についての研究が十分になされているとは言いがたい.そこでこれらの現象について,熱水系における流体と岩石の相互作用を中心に,鉱物学的・化学的・鉱物結晶の形態などについて検討を行った. フィールド調査については,2002年9月にモンゴルのShuteen Porphyry-Cu複合岩体の調査をおこなった.この調査では,地化学分析や熱水-岩石相互作用についての検討を行うため,おもに岩石および岩体内の鉱物脈のサンプリングをおこなった.特に鉱物脈は,岩体内部に過去に存在した熱水流路の化石と考えられる.また,西モンゴルのShargaljuult地熱地帯の調査もおこない,地熱流体や熱水湧出点近くのシリカ化合物の採取のサンプリングを行った.また,11月にはニュージーランドのWhakarewarewa地熱地帯においてシリカシンターのサンプリングを行った. 室内実験については,シリカシンターの結晶形態に関して光学及び電子顕微鏡を用いた観察を最初の段階としておこなった.その結果,結晶形態は個々の沈積状態の特徴や沈積履歴を反映していることがわかった.また,X線回折や顕微ラマンによる分析を,構造や化学組成などを得るためだけの手段としてではなく,結晶形態の情報を得るための手段として使用する方法を検討した.加えて,Shuteen岩体または現在も活動している熱水系を内在する岩体におけるシリカ沈積については,特にSEM-CLと呼ばれる微細な結晶構造を明確に観察する事の出来る手法を適用した. 成果発表については,24th NZ Geothermal Workshop,日本地熱学会2002年度総会,24th Annual PNOC-EDC Geothermal Conferencにおいて,上記の成果の一部を報告した.
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