研究概要 |
本研究において,ロシア,カムチャツカ南部にある4つの地熱地帯(ビィリュチンスキVilyuchinskie、ムトゥノフスキMutnovskie,ナチキンスキNachikinskie,マルキンスキMalkinskie)を調査した結果,高濃度の鉄,ヒ素,マンガンを含むバイオマットが多数認められた。この地熱・熱水系は,オイル,天然ガス,石炭,銅,ニッケル,コバルト,チタン,水銀鉛,亜鉛,ダイヤモンド,白金,金,銀などのロシアの金属および非金属の鉱物資源の一因となっている。私たちはバイオマット中で起こっている微生物が関与する生体-地球科学的な反応を光学顕微鏡,走査型・透過型電子顕微鏡を用いて観察・分析を行った。光学および走査型電子顕微鏡観察は,これらの温泉地帯で繁殖しているバイオマットのほとんどが鉱物とつながりをもつ多種のバクテリア(球菌、桿菌、糸状菌),シアノバクテリアおよび藻類で構成されていることが明らかになった。また,これらの温泉地帯のバクテリアの蛍光測定法にこよれば,バクテリアの総量は比較的少ないが,酵素活性を示すバクテリアの割合は27〜91%の範囲で高い値を示した。一方、ガンマー線の測定ではほとんどのところで320〜380keVの範囲を示し,特に,ビィリュチンスキの温泉でみられた緑と黒のバイオマットは特に高く,放射性物質を含むことを示唆している。以上の結果は,金沢大学理学部研究報告に48ページの論文(英文)として公表した他,COE国際シンポジウムで論文を発表した。 現在,採取した菌を培養し,生体鉱物の生成条件をさぐっている。さらに,ウラン,ストロンチウムといった放射性元素に耐性のある微生物を発見したので,野外と実験室の両方から研究を進めている。
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