研究課題/領域番号 |
14405008
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
幸田 正典 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70192052)
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研究分担者 |
宗原 弘幸 北海道大学, 北方圏フィールド科学センター, 助教授 (80212249)
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キーワード | 精子競争 / 雌による父性の操作 / 協同的一妻二夫 / DNA父性判定 / 雄の繁殖戦術 / カワスズメ / 巣の選択性 |
研究概要 |
最終年度である今年度は、主として協同的一妻多夫の婚姻形態を持つカリノクロミスを材料に、雌の巣選択について、及び雄の繁殖戦術が4つ存在することを確認したビッタータスの、さらなる繁殖実態について野外調査ならびに屋内飼育実験を実施した。 カリノクロミスでは、巣の形状により雌が大型雄小型雄による同時受精が可能であることが示唆されている。すなわち雌が産卵場所を選択し、奥まったくさび形の巣では奥側の卵塊を小型雄が、手前側の卵塊を大型雄がそれぞれ受精させる。このため一妻二夫の成立には巣の形状が極めて重要である。今回野外で人工巣を設置した実験では、雌は人工巣への好みを示さず、実験は失敗に終わった。しかしながら、国内へ持ち帰った約20匹の個体を用いた飼育実験では、雌はくさび形の巣を選択し、産卵することが明らかになった。今後、この飼育実験を継続し父性判定まで行えば、本協同的一妻二夫にとっての、雌による父性操作の重要性が明らかになると考えられる。 また、ビッタータスの研究では、なわばり雄による巣選択性が、繁殖寄生雄の寄生の危険の程度に応じたものであることがほぼ明らかになった。すなわち、なわばり雄は雌の多い巣を選ぶのではなく、パイレーツ雄の訪問頻度の低い巣を選んでいた。このような、繁殖寄生雄の危険性がなわばり雄の巣選択に影響を与えることが明らかになったのは、全くはじめてであり、この研究は今後この分野の研究に大きな影響を与えるものである。また、本種も国内へ持ち帰ることに成功し、現在50匹を飼育し、繁殖などの基礎データを得た。これらを用い、精子競争下での雄の精巣投資についても、来年度研究する。 また本研究で調査されたジュリドクロミスの、子の保護行動、共同繁殖の実態、精子競争に関する成果は、論文として海外の学術雑誌に公表した。
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