研究概要 |
今日の分類学者に課せられた1つの課題は、顕著に適応放散を遂げたグループの系統関係をグループ全体にわたって徹底して解析し、形態的・生態的多様化に関するすぐれたケーススタディを提示することである。ステビア属(キク科ヒヨドリバナ連)はこのようなケーススタディの格好の材料だが、以下の大きな問題が未解決である。これらを解決することが本研究の目的である。 (1)Stevia origanoidesなど、分布が広く多型的な「種」が単系統かどうか。 (2)南米には約130種が知られているが、これまで無融合生殖を行う倍数体が報告されていない。本当に無いのかを確かめたい。無ければ、それはなぜか、有るとすれば、どの程度の頻度でどのような地域に見られるか。 (3)メキシコ産の種が南米産の種とどのような系統関係にあるのか。 上記の4つの問題を解決するために、以下の研究を行なった。 (1)Stevia origanoidesに関しては、形態的・生態的に異なる2つの2倍体有性型が同所的に生育しているケースをDurango, Jalisco, Guerreroで観察している。これら2倍体有性型が同所的に種分化したのか、それとも異所的に種分化したあとで二次的に同所性を達成したのかを、AFLP解析によって調べた。この解析に必要なDNA資料を得るため、Jalisco, Guerrero, Mexico, Oaxacaで現地調査を実施し、新たにDNA資料を収集した。得られた資料にもとづくAFLP解析の結果、Stevia origanoidesはいくつもの隠蔽種を含み、これらの中には同所的に種分化したと考えられる場合もあれば、異所的に種分化したと考えられる場合もあった。 (2)ブラジル産ステビア属の染色体研究用資料を得るために、Sao Paulo, Santa Caterina, Roi Grande do Sulで野外調査を実施した。これらの資料にもとづき染色体数を調査した結果、これまでに調べたすべてのブラジル産種は2倍体有性生殖であった。 (3)ブラジルにおける現地調査において、DNA抽出用の葉の乾燥資料を収集した。これらの資料からDNAを抽出し、ITSの配列を決定し、これまでに得られたメキシコ産ステビア属の各種のITS配列と比較し、ブラジル産の種の系統的位置を確定する作業を行った。
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