研究概要 |
アジア温帯乾燥地域での砂漠化防止のため、緑化支援対策の一つとして、砂漠植物の送粉を行う有力野生ハナバチ類の探索、生息状況のモニタリング、送粉生態、営巣習性の調査、およびハナバチ類の分類、分布調査を目的として学術調査を行った。 平成16年度の海外学術調査は、下記の日程、調査国、人員(日本人+海外共同研究者)で1回行った。 4月26日〜5月24日、カザフスタン共和国、3名+1名 また、海外共同研究者(カザフスタン)2名を日本に招請し、共同研究のとりまとめと学術公開講演会を計5回開催した。 Dr.Roman Jashenko:10月11日〜11月2日(この間、福岡、鹿児島、松江、京都で公開講演会を開催) Dr.Vitaly Kastcheev:11月3日〜11月16日(この間、福岡で公開講演会を開催) 学術調査は主として、カザフスタンのキジルクム砂漠、ムユンクム砂漠、サルイイシコトラウ砂漠の3つの砂漠で実施し、訪花性昆虫の花ごとの見つけ採り、すくい採りによる採集を行い、特にハナバチ類については訪花植物の調査、営巣習性の調査を行った。採集した標本類はカザフスタン科学院の許可を受け各研究者が日本に持参し、標本作成の後分類学的研究を実施し、また訪花性、営巣習性の生態的資料のとりまとめを行った。 今年度は3つの砂漠で調査を行ったが、砂漠植物の開花期に実施したため、予想以上の膨大な数のハナバチが発生して送粉に関与しており、アジア温帯乾燥地域で植物の送粉にはたすハナバチ類の重要性を昨年度に続き確証することができた。ハナバチ類の採集数は6科約15,000個体で、前年までの調査で得られた標本数をあわせると、3万個体以上になり、世界有数の中央アジア産ハナバチ類コレクションを形成することができた。さらに米国ニューヨーク国立自然史博物館から借用した未整理の中央アジア産ハナバチ標本を加えて、鋭意分類学的研究を進めており、今年度は2編の論文を印刷発表し、原稿準備中のものは3編ある。 また、生態的調査については、今年度はコハナバチ科Halictus sp.2,Halictus sp.3,Halictus sp.4,Lastioglossum sp.1ハキリバチ科sp.1,sp.2,sp.3の合計7種の巣の構造調査を行うことがてき、今年度はヒメハナバチ科Andrenaについての生態調査の成果を印刷公表した。他の種についても順次論文を発表していく予定である。
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