研究概要 |
画像データロガーかに関連する研究成果としては,データ解析手法が確立した事が挙げられる.過去に南極海のウェッデルアザラシから得られた画像には,餌生物とおぼしき細長い物体が無数に映っていた.各物体の明るさを基準に,画像解析ソフトを用いて粒子を抽出し,粒子の数と面積から指数を算出した.画像はアザラシの潜水軌跡上で,30秒間隔で撮影され,合計数千枚得られている.それぞれの画像毎に,上記の指数を算出し,撮影深度を元に鉛直分布図を作成したところ,250m以深において,急激に指数が上昇していた.これは,その深さにアザラシの餌となる生物が多数存在することを示唆している.同時に得られているアザラシの潜水深度記録によると,アザラシは深度250mの潜水を高頻度に行っており,各個体が餌の鉛直分布に応じた潜水行動を行っていることが判明した. 従来,動物の潜水行動は,Time-Depth Recorder(TDR)によって調べられてきたが,これによってわかるのは時間と深度の推移のみであった.水中の3次元軌跡を把握するために,地磁気や遊泳速度も同時に測定できる3次元行動データロガーを開発した.これまで,ウェッデルアザラシからのデータが得られているが,今年度はその具体的な計算アルゴリズムが確立された.定着氷に開いた呼吸穴より300m近い深度まで潜水するウェッデルアザラシは,水平方向に600m近く移動しながらその深度に達する事,目標深度と呼吸穴の間は,比較的直線的に移動し,最大潜水深度付近で餌捕獲を行っている間は,ジグザグに泳いでいる事など,これまで知られていなかった新たな知見が得られた. 他にも,ペンギンや海鳥からも潜水中の詳細な記録が得られ,それぞれデータ解析・論文発表が大いに進んだ.
|