研究課題/領域番号 |
14405032
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
酒井 健夫 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50147667)
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研究分担者 |
倉根 一郎 国立感染症研究所, ウイルス第一部, 部長 (90278656)
伊藤 琢也 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (20307820)
三浦 康男 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (20339295)
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キーワード | 狂犬病ウイルス / ブラジル / 家畜 / 野生動物 / G蛋白質 / 遺伝子解析 / 分子疫学 |
研究概要 |
本研究は、ブラジルで分離された狂犬病ウイルス野外株の遺伝子配列を明らかにすることによって南米における狂犬病ウイルスの感染環を解明し、得られた遺伝子情報を基に高感度かつ迅速簡便な分子遺伝学的診断法を開発し、南米での狂犬病の防除対策に応用することを目的とした。 ブラジルで採取された狂犬病ウイルス株14検体を用いて、病原性および抗原性状に関連するG蛋白遺伝子およびG-L間領域(シュードジーン)について遺伝子および系統学的解析を行った。分離株は、ヌクレオ(N)蛋白の解析によってイヌ型狂犬病ウイルス(DRRV)または吸血コウモリ型狂犬病ウイルス(VRRV)の2系統に分類されたものであった。これらのG蛋白コード領域およびシュードジーンの塩基相同性およびアミノ酸(AA)相同性は総じてエクトドメインのものよりも低かった。両領域において、VRRVの塩基およびAA相同性はDRRVに比べて数値が低かった。また、DRRVとVRRVの推定AA配列においては、3箇所の抗原認識部位およびエピトープ(サイトIIa、サイトWB+およびサイトIII)に相違があり、両系統が抗原性状により区別できることが示唆された。シュードジーンおよびG蛋白コード領域の系統樹とエクトドメインの系統樹を比較すると、翼手類および食肉類由来株グループの分岐は異なっていた。一方、DRRV分離株はブラジルのDRRVよりも近隣中南米諸国の翼手類分離株により近縁であった。 以上の結果は、N遺伝子と同様、G遺伝子およびG-L間領域の解析においても、ブラジルの狂犬病分離株がDRRVまたはVRRVに分類できることを示した。本研究成果は、野外狂犬病ウイルスの由来種鑑別を可能とするRT-PCR診断法の確立に有用であり、今後南米における野外ウイルスの迅速鑑別診断および分子疫学的解析への応用が期待される。
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