研究概要 |
2003年8月〜9月にフィジー共和国のVanua Levu島とViti Levu島においてMetroxylon属植物の生産生態ならびに利用の状況等について調査した。Viti Levu島にはCoelococcus節M.vitiense Benth.et Hook.が分布し,songaと呼ばれていた。デンプンの利用はみられなかったが,インド系住民が生長点(songa shootと呼ぶ)をいわゆるパームキャベジ(パルミト)として利用されていた。主要路の道端やローカルマーケットでsonga shootが販売されているが,1本F$1〜3と価格差が大きかった。また,Viti Levu島では無計画な伐採・利用と観光施設建設のための開発により,急速に生育面積が減少していることが明らかになった。植物資源保全と生態的多様性維持に向け,持続的利用のための教育,ならびに具体的な方策の堤案と普及が急務といえる。 M.vitienseのデンプン収量はMetroxylon節のM.sagu Rottb.に比べると低いことが明確になったが,これはミクロネシアやヴァヌアツに分布するCoelococcus節の近縁種と同様,髄乾物率の低いことが主たる要因と考えられた。M.vitienseの樹型は大型で,花序の形態はM.salomonense Becc.に似ているが,球形の果実はCoelococcus節の中では小型であった。 Vanua Levu島南部の一部の住民グループは,Metroxylon属植物をpamと呼んでいた。また,同島において,M.vitienseの他にヴァヌアツ原産とされる同節のM.warburgii Heim.の分布が,島の南西部に位置するソロモン諸島からの移民により開拓された村で認められた。M.warburgiiはM.vitienseに比べて樹型は小さいが,洋ナシ形の果実のサイズは大きかった。以前は,Metroxylon属の小葉を屋葺き材に利用していたようだが,現在ではVanua Levuにおいてもデンプンの利用はみられないことが明らかになった。
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