研究概要 |
2004年8月〜9月にサモアのUpolu島においてMetroxylon属植物の生産生態ならびに利用の状況等について調査した。本島にはM.warburgiiが完全に栽培化された状態で分布していた。それに対して,M.paulcoxii(M.upoluense)は調査期間中に1個体のみしか生育が確認できず,絶滅が危惧される状態にあることが明らかになった。 本島では,Metroxylonをniu o lorumaと呼んでおり(「ロトゥマのヤシ」の意),フィジー・ロトゥマ島(Rotuma)に分布する種との関連が窺われた。M.warburgiiの樹型やサイズは,ヴァヌアツやフィジーに分布する個体とほぼ同程度であり,デンプンや糖の含量あるいは収量も同じ程度で,他地域に分布する同属他種に比べると樹は小型で収量も低いということができる。 利用は南太平洋の他の地域,メラネシアやミクロネシアと同じく,屋根材として小葉が利用されているほか,救荒作物としてデンプンの利用がみられた。50〜60年前に比べると,近年はデンプン利用の頻度は極めて低くなっていることが窺われたが,ヴァヌアツやフィジーといった同種の他の分布地域に比べると,栽培化の程度がかなり進んでおり,完全な栽培植物といえる。 今後は,M.paulcoxiiの分布と生育量の把握を通じて,保全に向けた方策の検討が課題である。
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