研究概要 |
2002年にVanuatuのEspritu Santo島,Malakura島においてMetroxlon warburgii,2003年にFijiのVanua Levu島,Viti Levu島においてM.vitiense, M.warburgii,2004年にSamoaのUpolu島においてM.warburgii, M.paulcoxii(1998年以前はM.upoluenseとして扱われていた)の生産生態を調査した。日本学術振興会熱帯生物資源研究事業で実施した2000年のVanuatu・Gaua島におけるM.salomonenseおよびM.warburgii,2001年のMicronesia・Moen島,Uman島,Pohnpei島におけるM.amicarumの調査結果と合わせて,これらの南・西太平洋に分布しているMetroxylon属Coelococcus節植物は,東南アジアやメラネシアに分布するMetoxylon (Eumetroxylon)節のM.sagu(いわゆるサゴヤシ)に比べてデンプン収量が低いことが明らかになった。Colococcus節の低収性は,M.warburgiiにおいては本来樹体サイズが小さいこと,また,M.warburgiiを含めていずれも髄乾物率が低く,かつデンプン含量が低いことが主たる要因であった(M.paulcoxiiについては1個体しか発見できず,樹体サイズが小さいことは認められたが,収量調査は行えなかった)。しかし,Coelococcus節植物はM.saguに比べて全糖含量が高いことが特徴的であった。このことは,M.saguが主にサッカーによる栄養繁殖で増殖し,種子発芽率は極めて低いのに対して,Coelococcus節ではサッカーを生じることなく種子繁殖によってのみ増殖し,一様に発芽率が高い種子を生産することと関連しているものと考えられた。
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