研究課題
インドネシア・マレーシア・沖縄などの熱帯・亜熱帯地域を中心に昨年度に引き続き現地調査を実施し、それぞれのアリ類の行動生態と外分泌腺構造および分泌物の化学構造の調査を実施した。また辻はヨーロッパを訪問し、共同研究者らと実験・討論した。Billen博士を4月はじめに招聘し、研究代表者と研究内容や発表予定論文の内容を討議するとともに、今後の共同研究のすすめかたなどについて議論した。おもな研究実績は以下のとおり。(1)アジアツムギアリを用いた害虫の生物的防除は熱帯アジアの農業で実用化され今後も有望視されている。スマトラの果樹園において、このアリが果樹の送粉を妨害するという、応用上の難点を持つ可能性を野外調査により指摘した。原因として、アリの攻撃行動あるいは外分泌物による忌避効果が考えられた。(2)食卵による産卵後ワーカーポリシングの存在が示されている沖縄産トゲオオハリアリにおいて、卵巣を発達させた個体への攻撃による産卵前ワーカーポリシングもまた存在することを示した。体表物質がポリシングの鍵刺刺激である可能性を指摘した。(3)社会性昆虫では一般に成虫の齢と繁殖をめぐる闘争の順位に相関があり、アリ類では若い個体ほど順位が高くなるのに対しカリバチ類では、逆に老齢個体の方が順位が高くなる。この現象について、生活史との関連から適応的な説明を与えるとともに、社会性昆虫が互いの余命を体表物質等でアセスしている可能性を指摘した。(4)鳥やほ乳動物によって種子が散布される熱帯果樹の種子の生存に対するアリの影響を調査し、アリが果肉部をかじり取る際に何らかの抗菌物質を種子表面に塗り付けているらしいことが実験的に示された。(5)アリ捕食者であるアマガエルをもちいた捕食実験を様々な種を対象に実施し、アリの種類によって捕食量が著しく異なることや、カエルは明らかに不味いアリを経験すると、それに外見が類似したアリや昆虫類を避けるようになることが実験的に示された。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
Insectes Sociaux 52
ページ: 89-96
Journal of Ethology In press
Behavioral Ecology and Sociobiology In press
Sociobiology 45
ページ: 495-502
Naturwissenschaften 91
ページ: 481-484
Ecological Research 19
ページ: 669-673