研究課題/領域番号 |
14405037
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤田 昇 京都大学, 生態学研究センター, 助手 (50093307)
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研究分担者 |
和田 英太郎 総合地球環境学研究所, 教授 (40013578)
山村 則男 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (70124815)
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キーワード | グレイジング / 種多様性 / 土壌塩類 / 裸地化 |
研究概要 |
遊牧草原の植物の多様性と家畜のグレイジング圧の関係を調べるために、草の多様性は1平方メートル当たりの草の種数の多さで求め、家畜に頻繁に食べられるほど草丈が低くなるので、グレイジング圧は植物の草丈から推定した。その結果、草原植物の種多様性は、遊牧家畜のグレイジング圧が強すぎても、弱すぎても低く、中間のグレイジング圧で最大となり、熱帯林と珊瑚礁で提唱された中規模攪乱説に一致した。また、草原植物の種多様性は谷間のような富栄養な立地では中規模のグレイジング圧を受けると上昇するが、尾根のような貧栄養な立地では逆に低下し、種多様性に対する攪乱の影響は立地の肥沃度によって異なるという仮説が実証できた。遊牧民の居住地近くの家畜の集まる草原では、オーバーグレイジングによってグレイジング耐性植物の優占と家畜の食用植物の減少を生じ、草原の遊牧による利用度は著しく低下していた。逆に、遊牧地から遠く離れた草原では、食用植物が優占し、遊牧への利用可能性は高いが、グレイジング圧は弱く、実際には利用されていなかった。これら二つの草原は草の種多様性が低かった。一方、草の種多様性の高い草原は中規模のグレイジング圧を受け、かつ家畜の食用植物の比率も高く、遊牧草原として持続的、効果的に利用されていることが明らかになった。グレイジング耐性植物の優占によるグレイジング圧の低下はグレイジング耐性植物そのものの衰退をもたらすはずである。しかし、オーバーグレイジングによる草原の裸地化は土壌表層への塩類の集積による土壌のアルカリ化を生じていた。グレイジング耐性植物は土壌のアルカリ化にも耐性があるため、いったん優占したグレイジング耐性植物は簡単には衰退しないことが予想された。
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