研究課題/領域番号 |
14405037
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤田 昇 京都大学, 生態学研究センター, 助手 (50093307)
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研究分担者 |
和田 英太郎 京都大学, 総合地球環境学研究所, 教授 (40013578)
山村 則男 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (70124815)
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キーワード | オーバーグレイジング / グレイジング耐性植物 / 蒸発散 / アルカリ化土壌 / 放棄農地 / 市場経済化 |
研究概要 |
モンゴルでは、近年、遊牧家畜の私有財産化とカシミヤ需要の増大によってヤギを中心とした家畜数が激増し、市場経済の中心である首都ウランバートル辺近郊に遊牧民が集中してきている。また、乾燥化の進行による夏季の小河川の干上がりよって地方では水の涸れない大河川周初に遊牧民が集まってきている。したがって、ウランバートル近郊や河川周辺の草原の家畜によるオーバーグレイジングが著しい。オーバーグレイジングは家畜の食用とならないヨモギ類などのグレイジング耐性植物の優占をもたらし、遊牧草原の生産性を低下させる。グレイジング耐性植物がいったん優占しても家畜のグレイジング圧が低下するので、時間がたつと再びイネ科などの家畜の食用植物の再優占に可逆的に変化するはずである。しかし、実は、モンゴルの遊牧草原ではグレイジング耐性植物がいったん優占すると長く続く。なぜグレイジング耐性物の優占が長続きするのかがモンゴル遊牧草原の時速的利用において大きな問題である。それは、モンゴルでは水循環のバランスが微妙で、オーバーグレイジングによる草原の裸地化と地表の撹乱によって地表からの蒸発散が増大し、森林地帯であっても土壌がアルカリ化しするためである、農作による耕耘はオーバーグレイジング同様に土壌のアルカリ化をもたらし、放棄農地にはグレイジング耐性植物が優占する。土壌がいったんアルカリ化すると降水と蒸発散のバランスが回復せず、土壌はなかなか中性にはもどらない。そのため、グレイジング耐性植物の優占は不可逆的に長く続くのである。毒物質であるアルカロイドの草原植物での蓄積をアルカリ土壌は容易にするので、アルカリ化した土壌の草原は家畜の食用とならないで荒廃した状態が長く続く。
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