研究概要 |
熱帯熱マラリア原虫の薬剤耐性株の出現と拡散は、マラリア対策における重大な問題である。熱帯熱マラリア原虫のクロロキン耐性に重要なpfcrt遺伝子、多剤耐性遺伝子pfmdr1について、遺伝子多型とその時間変化を東南アジア3カ国のサンプルで解析した。 2002-04年にミャンマ-の国内ほぼ全地域から得た約250サンプル、ベトナム南部の一集落で2000-03年の夏に得た約400人からのサンプル、2003-05年にインドネシアの異なる3地域からのそれぞれ30?50サンプル、これらを比較すると、pfcrt遺伝子Lys76Thr近傍の配列、pfmdr1遺伝子の5ヶ所のpolymorphismについても、各々の国ごとに特徴があることが示された。 これは、使用してきた薬剤に感受性の低いタイプがより選択されてきたと考えられる。ベトナムでは長期にわたってクロロキンの使用をやめてきたので、クロロキン感受性株の割合が非常に高い。ここ数年、その割合はいっそう高まっている。ミャンマーでは,様々の薬剤が個人個人で購入して使用されている。これを反映してpfmdr1の遺伝子に多型が認められる。インドネシアではクロロキンが第1選択薬である。これまで調べた全ての遺伝子がクロロキン耐性型であった。また同じ国内であっても,地域によって遺伝子タイプに違いが認められる。 PCRを用いたマラリアの鑑別には確立した方法があるが、P.malariaeとP.ovaleの検出において安定した結果が得られない場合があった。それはプライマーサイトにマイナーなpolymorphismがあることが原因であることがわかった。そこでその部分にmixedprimerを設計し、別の方法で用いられている鑑別プライマーをもう一方のプライマーとして用いることにして、ヒトに感染する4種類のマラリア原虫のPCRによる検出方法を確立出来た。
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