研究概要 |
2000年の沖縄サミットでも取り上げられたように、マラリアはAIDS、結核とともに、世界で公衆衛生上最も重要な感染症のひとつである。現在でも2億7000万人の患者が発生し、年間100万人以上が死亡するものと推定されている。過去の根絶計画が手詰まり状態にあるなか、コミュニティーを基本としたプライマリーヘルスケアの一環としてのマラリア対策が現在では主流となっている。日本も世界各地でマラリア対策に資金援助、技術協力を行ってきたが、そのようななか、琉球大学医学部も1995年より5年間、東南アジアのラオス国においてマラリア対策に取り組んできた。本研究はこれまで当大学がラオス国で築いてきた相手国との信頼協力関係をもとに、IBN(薬剤浸漬蚊帳)を使用したマラリア対策の継続、マラリア対策における治療の研究を柱に,総合的に調査研究を進め、有効なマラリア対策を構築するための知見を得ることを目的とした。しかしながら、当初ラオス側との交渉・調整の中心にいた研究代表者の転出に伴い、研究代表者の交替、研究組織の変更を行わざるを得なくなった。その結果、再度ラオス側と計画の見直し・調整を行うことになった。その際、当初計画していた調査地域カムワン県について、これまでのIBNの配布を中心としたマラリア対策が功を奏し、県全体でマラリアの陽性率が低下しているとの報告を受けた。それによって、調査地域を再度検討する必要に迫られ、その結果、現在IBNの配布が未だ進んでなく、依然としてマラリア陽性率の高い南部のサラバン県に絞って、手始めにマラリア侵淫状況を把握するため、予備調査を行った。調査は、2003年2月(乾季)、マラリアの患者の増える雨季の際に実施する本調査を想定して、調査地域へのアクセス状況を考慮しながら、サラバン県下の2つの郡の4カ村を選定し、その住民合計700人を対象にマラリア血液検査を実施した。現在、調査地より持ち帰ったギムザ染色標本を観察しており、結果がわかり次第、来年度雨季の本調査に向けて、ラオス側と打ち合わせを行い、本調査を実施する計画である。
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