研究課題
基盤研究(B)
Vibrio choleraeはインド亜大陸、特にガンジス河流域の水環境に定着して、コレラの流行を繰り返しているが、自然界での消長に関してなお不明の点が多い。本菌は、その206の血清型のうち01と0139が流行性のコレラを起こすが、non-01/non-0139血清型株にも単発性ではあるが、激しい腸疾患を起すものがある。01/0139両血清型の菌は人に病原性を示すために必要な病原遺伝子、すなわちコレラ毒素(CT)遺伝子、定着に必要なtoxin co-regulated pilus(TCP)遺伝子、およびその制御にかかわるToxR遺伝子を保有していることが知られている。近年の研究は、これらの遺伝子が多くの血清型にも分布していることを示しているが、後者の血清型でこれらの病原遺伝子を保有しているものは稀である。そこで、本研究ではインドおよびバングラデシュでの分離株について分子遺伝学的に解析を行ない、環境分離V. cholerae 01,0139と臨床分離V. cholerae 01,0139がすべて上記の3病原遺伝子が陽性であり、同一クローンまたは非常に近い関係にある株であることを明らかにした。すなわち、この地域の環境水中に住み着いているV. cholerae 01,0139は、あるクローンが大部分を占めており、それがヒトにコレラを引き起こすと考えられる。一方、non-01/non-0139の分離株のほとんどは、患者から分離した株を含んでいるにもかかわらず、1株を除いてctxAとtcpAは陰性であった。しかし、これらの株はtoxRおよびV. cholerae hemolysin (VCH)をコードするhlyAを保有していた。また、NAG-STやNAG-TDHなどの他の腸管毒素遺伝子も一部の株しか保有していなかった。これらの結果は、non-01/non-0139分離株におけるVCHの腸管毒性因子としての関与を示唆している。例外的なnon-01/non-0139株としてctxAとtcpAを保有するものが1株得られ、しかもこの株のtcpAとhlyAは、いずれもクラシカル型であり、かつ活性なVCHを産生する稀な性状の株であることが明らかになった。すなわち、流行性株の生じるリザーバーとしてのnon-01/non-0139の意義が確認されたものであり、流行現象解明への有益な情報を提供し得ると思われる。
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