研究概要 |
全世界で毎年200万の小児が下痢で死亡し、30%は毒素原性大腸菌(ETEC)が原因である。一方、20%は原因菌が不明であるが主に飲料水による。そこでETECのLTを産生し環境で増殖できる菌をインドネシア、スラバヤ地域で検索した。その結果低栄養、低温の河川水で増殖できるPseudomonas fluorescens (enterotoxigenic P.fluorescens, ETPF)が、ETECのLTを産生することを発見した。そこで、現在染色体全遺伝子の構造解析を行なっている。また、本菌の小児患者の下痢便からの分離を試みた。しかし、小児下痢便からのETPFの検出の頻度は低かった。一方、その際の疫学調査、150例の激しい小児下痢患者から6人に他の主な下痢原因菌(Shigella,病原性大腸菌,Salmonella属,Vibrio属、Campylobacter属等)は全く検出されず、便からPseudomonas属菌(P.fluorescens、P.putida)のみが検出された。 そこで、このPseudomonas属菌の産生している下痢原因毒素の検出するため、菌の培養液の上澄みを、ウサギloop試験で下痢毒素の検出を行なった。その結果、本試験で下痢活性を検出した。現在、その下痢毒素の精製を終了した。さらに、インドネシア、スラバヤ地域のアイルランガ大熱帯病研究所、Yoes Prijatna所長とEddy Bagus Wasit講師とブラジル、サンパウロ市立キャンピーナス大学Yano Tomomasa教授との共同疫学調査を終了した。その結果、激しい小児下痢患者から本属菌のみが検出される頻度は、上記と同様に3〜4%に達する。現在、原因不明の下痢原因菌が20%とされているが、我々が新しく発見したPseudomonas属菌は小児下痢原因菌である可能性が高い。
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