研究概要 |
本研究は平成14年度からの継続研究であり、15年度には、以下の2点を中心に研究活動を実施した。 ・平成14年度に調査した疫学データの解析と採取した生体試料の分析を継続した。 ・平成15年度も前年に引き続きベトナムでの現地調査を実施した。 以下に主な成績を述べると、1)2002年5月に実施した疫学調査の主な結果は、(1),汚染地区では自然流産や先天異常の発生率が22.4%,12.6%と対照地区の11.3%,4.9%より各々有意に高かった。 (2),対照地区において、すべての生殖異常の発生率は散布地区の従軍歴経験者が9.4%と非経験者の5.3%より有意に高率であった。 2)2002年9月に採取した生体試料の分析結果は、(1),血清は健康な男性1人当たり1.25mlずつ計4名分5mlを1試料として分析した。年齢階級10歳毎に両群を比較すると、ダイオキシンとフランの総量が10〜50歳の各年代とも汚染地区が対照地区を上回り、平均値は13.9,3.4pg-TEQ/g fatと有意な差を認めた。 (2),母乳は、両地区各6検体を分析し、総量の平均値は9.3,3.0pg-TEQ/g fatと汚染地区が対照地区より有意に高かった。 (3),皮下脂肪は汚染地区8検体、対照地区13検体を分折した結果、総量の平均値は35.6,21.9pg-TEQ/g fatと汚染地区の方が高めであったが、有意差は認められなかった(p=0.08)。 但し、対照地区対象者はいずれも枯葉剤への暴露経験者であった。 3)2003年7月に引き続き現地調査を実施し、汚染地区61人、対照地区46人から血清と母乳の両試料を採取した。母乳中のダイオキシンは異性体毎に両地区で比較検討した。いずれの平均値も汚染地区の方が高く、五塩化ジベンゾパラダイオキシン(P5CDD)や総量等で有意差が見られた。 残りの検体についても引き続き分折中である。
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