研究概要 |
2002年より2004年までの3年間に、ベトナム中部の枯葉剤撒布地Quang Tri省Cam Chinh村と対照地区Ha Tinh省Cam Phuc村の住民調査を計4回実施した。血液、母乳、皮下脂肪を生体試料として採取し、凍結保存して日本国内に搬送した。各試料中のダイオキシン類とその異性体の濃度を高感度質量分析計にてTEQ換算で測定した。その結果、いずれの試料においても、汚染地区住民のダイオキシン類濃度が統計学的に有意な高値を示した。但し、異性体比率では最も毒性が強い2,3,7,8-TCDDの占有率は20%以下で、むしろ5,6塩化の比率が高く、この結果は従来の報告と異なる。血清生化学検査では、甲状腺や月刊蔵の機能検査で両群間に系統的な差は見られなかった。血清コリンエステラーゼ値が母乳中のダイオキシン類濃度と負の相関を示した。児の身体計測値も両群間に有意差は見られなかったが、児の胸囲と母乳中のダイオキシン類濃度との問には負の相関がみられた。両指標は重回帰分析の結果でも、母親や児の年齢(月齢)を考慮に入れても、母乳中のダイオキシン類濃度と有意な関連性を示した。
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