研究課題/領域番号 |
14406012
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
奥村 順子 東京大学, 大学院・医学研究科, 助手 (40323604)
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研究分担者 |
市川 政雄 東京大学, 大学院・医学(系)研究科(研究院), 助手 (20343098)
中原 慎二 東京大学, 大学院・医学(系)研究科(研究院), 助手 (40265658)
若井 晋 東京大学, 大学院・医学(系)研究科(研究院), 教授 (30158571)
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キーワード | HIV / 梅毒 / 有病率 / ネパール / 妊婦 / 出稼ぎ労働 |
研究概要 |
ネパールにおけるHIV prevalence(推計値)の公式発表値は0.15%といわれているが、本研究グループが平成13年4月に同国極西部ドティ県東北部の集落において150名の男性を無作為抽出し調査した結果、HIV、梅毒、B型肝炎(HBs-Ag及びHBs-Ab)のprevalenceはそれぞれ、7.4%,22.5%,66.5%と異常に高いことが判明した。本結果をうけ、同地区で女性を含む大規模調査を実施する予定であったが、平成13年11月末より全国レベルにおける毛沢東主義者らの率いる反政府活動により同国の治安が悪化したことから(ことに極西部の治安悪化は顕著であった)、当初の計画を変更せざるを得なくなった。 上述のドティ県の被験者の3分の2以上がインドなどにおける出稼ぎ労働を経験していたことから、同様に海外への出稼ぎ労働者が多く、ネパール国内にあって比較的HIV prevalenceが高いと予測されているポカラ市およびその周辺部において平成14年12月(1ケ月間)、次の目的で妊婦を対象とした調査を実施した:1)妊婦のHIV、梅毒、B型肝炎の有病率を得ることでNon-risk集団へのこれらの感染症の伝播の状況を推測する。2)国内外における夫および本人の出稼ぎ経験と有病率の関係を探る。3)KAP調査からその他の危険因子の可能性をさぐる。なお、本研究の実施にあたっては東京大学医学系研究科およびネパール国ヘルスリサーチ・カウンシルにおける倫理委員会の承認を得た。 調査の結果(n=426)、HIVおよび梅毒のprevalenceはそれぞれ、0.2%と1.2%であった。被験者の3割以上の夫が海外への出稼ぎ労働者であり、すべてが妊婦であり明らかにコンドームを使用していないにもかかわらず、かなり低いものであった。この理由は、配偶者の出稼ぎ先の9割以上が中近東であり、イスラム社会における性行動の制限および現地の低い性感染症有病率にあると考える。今後もこの集団をコッホートとしてフォローするかたわら、治安状況が許せば、ドティ県における妊婦を対象とした同様の調査を実施し、この2つの集団を比較検討する予定である。
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