ラオス都市部での急速な人口増加と、経済活動の変化に伴う国外からの生活物資の急激な増加は、貨幣価値に換算した経済水準の向上をもたらす一方、市場経済開発に遅れをとった貧困村落集団において感染症リスクが増大したり、若者のライフスタイルの変化と繁華街の増加に伴って性行為感染症が増加している。特に、経済物資の輸送を担う交通網の発達と、生活の変容、環境変化と、都市部における健康リスクの増大が危惧されている。本研究では、インドシナ半島において経済活動と人口の変化が顕著に認められる、「ビエンチャン-ノンカイ」「バンコク-プノンペン-ホーチミン-フエ」の陸路交通路沿いにおいて、結核ならびにその他の感染症罹患調査、衛生環境調査、衛生習慣調査と、流通物資の調査を実施した。結核罹患ならびに健康プロフィールと、交通量変化、市場経済活性化、都市基盤整備、衛生環境、人口密集度、社会経済状況の変化との関連性を、健康決定多要因複合モデルにより解析した。ビエンチャン都市住民の都市交通網へのアクセスが薬物乱用のリスクの拡大をもたらしていること、水上交通と陸路交通との交錯がおこる人口密集地域におい居住稠密が結核伝播を惹起すること、交通路の整備に伴って都市化が進展しても家畜と近接して居住している生活様式が人畜共通感染症リスクを増大させていること、を明らかにした。インドシナ半島における都市化は、急速な交通網の発達をみる一方で、特定地域における稠密居住、家畜と近接した居住といった生活様式が残されている。交通量が増大することにより感染伝播の機会が増大する一方、感染を制御する環境条件の整備が対応していないことが示唆された。交通網の急速な発展に伴う人の移動ならびに家畜と食用動物の移動、居住地域ならびに商業地域における衛生環境、人々の衛生習慣と疾病予防技量の条件が、疾病罹患リスクと多様な相互関連性を示すことを明らかにした。
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