研究概要 |
中華人民共和国府江蘇省塩城市にある工場で1-ブロモプロパン製造に従事する22人(男性11人、女性11人)の労働者および、対照群として、性年齢をマッチさせた組み立て工場労働者22人の健康調査を行った。具体的には、下肢運動神経伝導速度(MCV)、遠位潜時測定(DL)、F波の測定、心エコーによる心臓機能の評価、神経学的診察、下肢振動覚検査、神経行動学的検査(単純反応時間、Digit Span, Sant Ana, Digit Symbol, Benton, Pursuit aiming test, POMS)、重心動揺検査、血液学的、生化学的検査(GOT、GPT、γ-GTP、Cr、T-cho、TG)である。また、パッシブサンプラー(柴田科学)を用いて個人曝露量(8時間時間加重平均)の評価を2回のシフトにわたって行った。健康調査は、名古屋大学医学部倫理委員会の承認を受け、文書によるインフォームドコンセントを得た後に行った。個人曝露濃度(2シフトの平均値)は、1BP0.06-106.4 (平均7.05、中央値1.00) ppm、2BP0.004-12.9 (平均1.1、中央値0.027) ppmであった。女性で白血球数が曝露群で有意に減少していた。前回調査での宜興工場に比べ、製造工程でポンプを用いるなど、労働者の曝露の機会は少ないと考えられた。一人の労働者を除き、曝露濃度は10ppm以下であった。1-ブロモプロパンだけでなく、2-ブロモプロパンにも曝露されていた。白血球の低下は曝露と関連しているかもしれない。
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