研究概要 |
1.日本人、中国南部(広州)、北部(北京)、韓国、マレーシア、アメリカにおいて、H.pylori感染率を調査したところ、中国北部、中国南部、韓国、日本、マレーシア、アメリカの順に高かった。 2.上記の各地域において、H.pylori陰性正常人について年齢、性をマッチさせて、ガストリン刺激による胃酸分泌反応(BAO,MAO)を検討したところ、アメリカ、マレーシア、中国南部の順に胃酸分泌能が高く、日本、韓国、中国北部ではほぼ同等で他の地域より低かった。 3.しかし血中ガストリン、ペプシノーゲンI,II,I/II比は、すべてのグループにおいて差は認めなかった。 4.各地域の胃潰瘍、十二指腸潰瘍比を検討した結果、日本、韓国、中国北部、マレーシア、中国南部、アメリカの順に高かった。またこの比率は胃癌の頻度に相関していた。 5.上記地域のH.pylori陽性胃癌、非胃癌症例について、IL1α,IL1β,IFNγ,IL10,IL12,TAP2,IL4,IL4 receptorなどの遺伝子多型(SNP)243領域について検討したところ、IL1βはいずれの地域でも有意差はなく、IL4,IL10で胃癌、非胃癌で有意差を認めた。 6.上記地域において、胃癌、非胃癌患者について、喫煙、飲酒、食塩接取量、カロリー摂取量、栄養バランス、香辛料摂取量について検討したところ、喫煙がいずれの地域においても喫煙が胃癌患者に多い傾向にあったが、それ以外は有意ではなかった。また各地域の差では、胃癌と食塩摂取量の間で有意な相関が見られた。 7.以上より、H.pylori感染による胃癌の発症については、各地域の人種(ホスト)の差、さらに喫煙や食塩摂取量など、環境因子の差が関与しているものと想定された。
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