【目的】 平成14年より、グアテマラ共和国ソロラ州サシティアゴ市郊外の集落において、内戦で夫や子どもを殺害されたマヤ先住民女性の自助グループIXMUCANE(構成員290名)を対象に、 1.TSDの文化依存的測面を明らかにすること、 2.外傷的出来事を想起時等の生理学的変化をEEG、ECG、そして眼球運動などを指標とし検査し、PTSDの基本障害に対応する生理学的反応を解明すること以上二点を目的とした調査を実施している。 【調査期間】 今回は、平成15年8月25日から9月の15日の22日間にわたり現地調査を実施した。 【調査方法・結果】 1.無作為に30名を家庭訪問し、SDS抑うつ度テスト等を実施した。SDS平均得点は39.3と、前回実施された精神症状が顕著な群(22名、SDS平均得点61)に比べ低値を示した。 2.今回、14名に多機能生態記録装置(ポリメイト・TEAC電子計測)を用い、外傷的出来事を想起時の精神生理学的反応を記録することが出来た。前回の20名のデーターを加え、計34名をPTSD群と非PTSD群にわけ、刺激前後の脳波における各周波数帯域の変化を比較検討した。PTSD群では、F3において刺激前のβ周波数帯域の%パワー値は、非PTSD群より優位に高く、覚醒水準の高さを反映していると考えられた。また、PTSD群では刺激前後のβ周波数帯域の%パワー値はF3において減少し、O1において変化が見られなかった。一方、非PTSD群では、O1において刺激前後のα周波数帯域の%パワー値は減少し、β周波数帯域の%パワー値は増加した。今後、症状に対応する生理学的変化を詳細に検討したい。 3.女たちの子ども18名(平均年齢13.8歳)に描画テスト(風景構成法、他)を実施したが、異常所見を認めなかった。
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