【目的】平成14年よりグアテマラ共和国サンチア・アティトラン郊外の集落において、内戦で夫や子どもを殺害された先住民女性の自助グループIXMUCANE(構成員290名)を対象に、PTSDの文化依存的側面、及び、基本障害に対応する生理学的反応を解明することを目的とした調査を実施している。 【調査期間】今回は平成16年8月26日から9月18日の24日間にわたり現地調査を実施した。 【調査方法・結果】1.平成15年度にSDSテスト実施した30名を対象に精神医学的診断を行った。その結果、何らかの精神的問題を認めた者は5名で、その内SDS得点40ポイント以下は1名であった。PTSDの症状を有する3名は、いずれもSDS得点は40ポイント以上であり、SDSはPTSDのスクリーニングテストとして有効と考えられた。2.外傷的出来事を想起時の生理学的変化を、多機能生態記録装置(ポリメイト・TEAC電子計測)を用い、EEG、ECG等を検査し分析した。1)33名をDSM-IVの診断基準に基づきPTSD群(N=8)と非PTSD群(N=25)に分け、心拍のパワースペクトラム解析(PSA)を実施した。PTSDと安静時のLFパワーの高さ、回想刺激後のLFパワーの反応性の低さが関係深いこと、特に、苦悶発作(外傷的事件の再体験と生理学的反応を伴った強い心理的苦痛)との高い相関性を示唆した。2)脳波において、DSM-IVの診断基準におけるC項目に注目し分析した結果、PTSD群ではF3において刺激前のβ周波数帯域の%パワー値は、非PTSD群より優位に高く、覚醒水準の高さを反映していると考えられた。また、PTSD群では刺激前後のβ周波数帯域の%パワー値はF3において減少し、O1において変化が見られなかった。この変化はC項目(外傷に関連した刺激からの回避、または反応性の麻痺や無感覚)に特異的な反応である可能性を示唆した。
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