研究概要 |
マラリアの診断とG6PDの活性検査を同時に行ない,プリマキンによる根治および生殖母体殺滅療法を含んだマラリア治療ができるように,東南アジア各地で現地のマラリア従事者とともにへき地を巡回している。G6PD活性正常のマラリア患者にはプリマキンを与えて再発の防止および蚊への伝搬を断ち切るようにした.G6PD活性低下者には溶血発作の可能性を考慮しプリマキンを与えないこととした。従来のG6PD活性検査法の欠点は,迅速であるが遮光をする必要があり,また反応を停止させることができないので,受診者が多いときなど判定に迷っているうちに反応がどんどんすすんでしまい,特に50%欠損(女性のheterozygote)の判定が難しかった。本年度は共同研究者の川本(Tantular and Kawamoto 2003)が新規の発色基質を見い出したたため,G6PDの迅速診断法に進歩があった。WST-8というその基質は太陽の下で作業をしても,結果に影響が出ない。塩酸を加えることで反応が停止できる。このため50%欠損もほぼ見落としなく判定できるようになった。これまでは完全欠損を示す男性の検体を分析するばかりであったのが,女性の50%欠損者も分析できるようになり,検体数が2倍に増えた。こうしてアジアにおけるG6PD変異者の分布には国ごとに特徴的であることが明かになりつつある。さらなる課題は重度の貧血(Hb8g/dl以下)の女性におけるG6PD欠損の判定である。貧血のため相対的にG6PD活性は落ちている。これが貧血のためなのか50%欠損のためなのかを迅速に判定できるようにしなければならない。
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