ハイデガー哲学と現代の認知科学の関係についての、日本のみならず世界における先駆的な研究論文集、『ハイデガーと認知科学』(信原幸弘と共編、産業図書)を出版した。そのなかで、内的表象に訴えない行為の生成の過程を論ずるハイデガーの議論が、認知科学第三世代の研究にどのようなインパクトを持つかを検討し(序論)、さらに、ハイデガーの感情論が、現代認知科学に対してどのような批判と新しい理解を提示しうるのかを、検討した。後者の論文は、2002年5月の国際会議「Phenomenology as Bridge between West and East」において「Cognition and Emotion : A Heideggerian Approach」として発表され、Continental Philosophy Review(近刊)に掲載予定である。認知から行為に至るハイデガーの「反表象主義」を、現代の認知科学で議論されている新しい表象概念の光のもとで検討し直す作業を行い、2003年3月の国際会議「UTCP International Symposium : Redefining Philosophy in the 21st Century」において、「Heidegger and Representationalism」として発表した。ハイデガーの言語論を論ずる基礎作業としての、分析哲学とハイデガー哲学の関連については、2002年12月の現象学社会科学会で「ハイデガーと分析哲学」として発表した。ハイデガーの言語論を特徴づける「表現主義」については、その解明の一部を、「ニーチェの「囲い」に抗して」『思想』(2003年4月号掲載予定)において行っている。
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