相互作用主義の観点から、表象の種類と機能を研究した結果、次のような成果が得られた。 (1)異なる感覚様相は異なるタイプの表象を用いて外界の事物を表象すると考えられる。生まれつき眼が見えない人はたとえば椅子を触覚的に表象することができるが(つまり触って椅子だと分かるが)、その人が視力を得て椅子を視覚的に表象できるようになったとき、その人は視覚的に表象される椅子が触覚的に表象される椅子と同じものだということに直ちには気づかないと考えられる。それに気づくようになるのは、両者のあいだの対応関係を何度か経験してからである。従って、椅子の触覚的表象と視覚的表象は異なるタイプの表象だということになる。しかし、われわれはこのように同じ事物にたいして感覚様相ごとに異なるタイプの表象を用いつつも、それらをまとめて単一の概念を形成する強い傾向がある。そのような傾向性は、客観的な世界の単一性を概念的に確保するためにわれわれに与えられたきわめて重要な能力である。 (2)理論的判断は記号的表象の変形によって得られるのに対し、直観的判断は分散表象の変形によって得られる。従って、理論的判断に至る過程は意識的かつ比較的時間を要するのにたいし、直観的判断に至る過程は無意識的かつ瞬間的である。反省的均衡は理論的判断と直観的判断を照合して双方を修正しながら、両者の均衡点を探る営みであるが、反省的均衡によって良い理論が得られても、直観の役割はなくならない。直観もまた経験的学習によって改善することが可能であり、直観は理論に対してどこまでもその試金石であり続ける。
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