研究概要 |
1.ベルゲン版データベースを使用してウィトゲンシュタインの未公刊の原稿と『数学の基礎』とを照合する作業を継続して完成した。対照表を表計算ソフトを使用して整理した。この作業により、『数学の基礎』に編集して収録された覚え書きの取捨選択の恣意性、異なる稿本の継ぎ目が見えにくくなる編集が行われている箇所の存在、等が確認できた。中間報告を、平成14年11月の日本科学哲学会(新潟大学)で口頭発表した。 2.後期の数学に関する覚え書きの中で、フレーゲ、ゲーデル、ディリクレ、スコーレム等に言及している覚え書きのかなりのものが『数学の基礎』に収録されていないことが判明した。これらの資料を活用したそれぞれの数学者に対するウィトゲンシュタインの見解の包括的検討は次年度の課題として残された。 3.『確実性について』と題されて公刊されている覚え書きの検討に部分的に着手した。この書物に関してはいわゆる「世界像命題」をめぐり多くの議論が存在するが、文献学的に検討した場合、「世界像」という表現自身がごくわずかしか登場しないことに注意が向けられ、いわばトーンダウンした再評価の必要性が明かとなった。この知見については整理の上、15年6月の科学基礎論学会(東北大学)で発表する予定である。 4.2001年8月のウィトゲンシュタイン国際シンポジウムでの招待講演を推敲の上、Wittgenstein and the Future of Philosophy : A Reassessment after 50 Years. Proceedings of the 24th International Wittgenstein-Synposium, Editors R.Haller & K.Puhl, Hoelder-Pichler-Tempskyに寄稿した。
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