研究概要 |
代表者、松田は、個人研究の形で過去三年の間に科学研究費補助金を利用して、研究実績の項目に挙げたような成果を挙げることができた。それは、ライプニッツの哲学を一貫して、例えば、古代と近世の二つの懐疑主義との対決から見た認識論として、とりわけ実在論的スタンスに立つものとして、読解することを試みる一連の研究の成果の形で『ライプニッツの認識論-懐疑主義との対決-』として出版された。その後、この出版を契機として、数学的対象としての数の認識とその存在論的身分の問題を、「ライプニッツ真理と根拠の多様性と統一性-「同一性」の論理と認識のトポス-」(『真理の探究』)で、物理学上の運動記述の枠組みとしての時間と存在の「観念性」の問題を、「なぜライプニッツは時間と空間を「観念的」と考えるのか?-ライプニッツ・クラーク書簡の認識論的考察」(関西哲学会第57回大会依頼発表)で、またフッサール現象学との対比での「モナド」の位置づけを、「二つの迷宮とモナド-ライプニッツと現象学的モナドロジーの対比のために」(現象学会第26回研究大会シンポジウム)で論じることになった。さらにこうした一連の研究成果に立ち、実在論的解釈にとっての試金石として、英米系の研究者の間で議論されている物体の存在をめぐるライプニッツの「観念論」ないし「現象主義」の問題に取り組み、バークリの『人知原理論』に関するライプニッツの批評などを手がかりに、それが「実在論的に」解釈可能である点をイギリス哲学会(Leibniz and the English-Speaking World. by British Society for the History of Philosophy, University of Liverpool. UK)及び第20回大阪市立大学哲学懇話会)での講演などで示した。最後のものについては論文発表の機会を待っている。
|