研究代表者宮原は、今年度はLakoffと並んで認知言語学のパイオニアであるLangackerの理論の哲学的考察をおこない、その成果を京都大学大学院人間環境学研究科の山梨正明氏が主催するKLC研究会にて研究発表した。まず、Lakoff、Langackerらの反チョムスキー派の認知言語学の哲学的特徴を「反-客観主義」、「身体性」、「経験基盤主義」の三点から捉え、さらにLangackerのFoundations of Cognitive Grammar Vol.1の「哲学的インプリケーション」を分析している。それによると、認知言語学の「存在論」、つまり物事は存在形態はどのようになっているか、という理論面では、アリストテレス以来の<実体-属性>という図式が崩され、属性は関係性へと解消されていく方向にあると指摘されている。これは、品詞で言えば形容詞の機能に関わる問題であり、形容詞は従来は実体の属性、ないしは性質を表現する品詞であるとされたが、性質ということ自体、あるドメインの内部での「比較」によって生ずる概念であるという。このような存在論と現象学者フッサールの理論とつきあわせることで、両者の特徴を浮き彫りにし、認知言語学が密かに持っている独自な存在論を哲学の場面で生かすにはどうしたらよいかを考究した。
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