ヴィーコの存在論の問題構成を広く17世紀形而上学、17世紀科学革命の問題諸連関の中に位置づけ、その革新性を明らかにした。 執筆した論文の第一章では、クローチェの解釈「改竄」に疑義を提出しつつ、ヴィーコの存在論と中世神学との関係について論じ、第二章では、ヴィーコの数学論、自然科学論の新しさを論じ、特に2500年余にわたる数理哲学史全体の中にヴィーコの存在論を位置づけ、ヴィーコが、無限という数学的対象の存在論を構築することを通じて、存在論全体の問題構成の革新に必然的に到達し、ゲーデルなど今日の数理存在論にも匹敵する構成を可能にするとともに、ヴィーコの自然科学論もまたアインシュタインの相対性理論に匹敵する境位に至ったことを明らかにした。第三章では、16世紀の霊魂論論争の中でデカルトのコギト論を位置づけるとともに、それを批判したヴィーコの精神の存在論の画期的意義を明らかにした。これらを踏まえ、第四章で、ヴィーコの社会存在論の構成を明らかにし、それがローマ万民法の伝統に立って、近代の自然法と契約論を両面批判したものであることを示した。 以上の新しいヴィーコ理解について、イタリアナポリのヴィーコ研究所を訪問し、カッチャトーレ教授、サンナ教授らと討論を重ねた。 またヴィーコ研究所の書誌雑誌に日本のヴィーコ研究の紹介論文を書く予定である。
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