康有為大同思想の形成をめぐって、従来の孔子が『礼記』礼運篇でのべた大同社会・小康社会という言葉をもとにした伝統思想の発展説に対して、近年、日本から西洋の翻訳書をとおして欧米社会主義思想が流入していたのではないか、という考察がなされ始めた。本研究では、その実証を康有為が集めたとされる日本書の目録『日本図目志』(1897)について主に国立国会図書館の明治期刊行書にあたって調査し、あわせ当時の西洋書の漢訳本についても都立と書館さねとう文庫等で調べた。「日本書目志の一考察」はその成果の一部である。 また、康有為『大同書』が刊行される1930年代以降の中国における大同思想書を上海、北京、台北等にて調べそのコピーをとった。これは目録として公表し、その内容の検討を次年度の主要任務とする予定である。特に孫文「三民主義」毛沢東「共産主義」との関係が大同思想との関連で述べられることが多いので、この点にも注目している。
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