14年度はおもに画像石にみえる神仙思想に関して研究をすすめ、芝草関係の資料を蒐集整理し、また道教や神仙思想関係の書籍、史書、本草・植物関係の書籍から記事を探し考察した。さらに中国美術・画像石・銅鏡関連の図書から画像を探し、分類整理を行っている。それらにもとづき、「芝草について」という論考をまとめつつある。もう少し整理した上で「古代学研究(古代学研究会)」に投稿予定である。また博山炉と香と蓬莱山に関して「博山炉と香-蓬莱山との関わりから-(『宮澤先生古稀記念論集』所収予定、原稿提出済み)」という題で考察した。博山炉は香炉であるが、形は仙山を模し、蓬莱山に由来する。これは明器としても使われ、その形は墓室内にも芝草などとともに描かれた。この場合は魂の昇僊と結びつけらたのだろう。僊人や僊者という語は蓬莱山との関わりで使用されたが、蓬莱山をかたどった明器を墓室内におくことは馬王堆の昇僊図などと同様に死者の魂を昇僊させる目的をもっていたのだろう。山腹に孔が穿たれた蓬莱山の形状は瓢箪や壷などのイメージと重ねあわされ、壷中天のように中に仙界がひろがるイメージを生み出した。中で魂が暮らすという発想である。しかし香が天界から神を降ろし、またその煙に乗って天界の神のところにいくということを考えたとき、博山炉には仙界と墓室を直接、結びつけるイメージがある。博山炉という香炉に死者の魂が入りこめば、そこは実際の蓬莱山であり、また香の煙とともに上昇して天界へも昇ることができると考えられたのかもしれない。またさらに「死についての文字学的考察-魂と骨の観点から-(人文学論集第21集、印刷中)」を著した。これは「死」という文字が骨によりつく魂の意味であるということを論証したものだが、それはまた頭部の魂を運ぶ意味の「僊」という文字とも関連していることを考察している。
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