本研究は、思想史的方法によって、インドにおける言語哲学の展開過程の全体を明らかにすることを最終的な目的とする。 そこで、思想史的研究への準備段階として、インド古典期から中世までの「言語哲学」に関わるテキスト資料(本・文章・断片)を網羅的に蒐集し、全体的に相互参照可能な形にまとめること、さらには「言語哲学」を構成する重要概念・語彙を抽出し、それを項目として並べ、それぞれについて参照すべき原テキストを提示し、それの意義・意味の解説と本文の翻訳を加え、さらには西欧諸語の対応語・関連語を付すという作業を逐次遂行することを、本年度の計画では目指した。 すでに作成済みのテキスト・データベース『ヴァーキヤ・パディーヤ』について、インド言語哲学を研究する上で重要と考えられる語彙についての検討をまず行った。同時に、1600年ごろ活躍したと思われるジャガディーシャの『シャブダ・シャクティ・プラカーシカー』を主たるテキストとして選んで、その全テキストの入力を開始した。今回のテキスト入力は、単なる入力ではなく、XMLテキストファイルの作成を目指したもので、各種の重要語句・概念に対してタグを付しつつの入力であり、同時にまた読解を行いつつの入力であるので、現在までのところその五分の一程度までしか入力できていない。 上記のテキスト入力作業と同時に読解研究をすすめたので、新論理学派における重要な論述方法と概念の使用法についてはある程度まで理解することができた。 残りの2年間で、当初の目標である「インド言語哲学語彙コーパス」の完成に向けた作業を行うこととする。
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