本年度に行った研究は以下の2点に要約できる。 1.前年度において、インド古典言語哲学の代表的テキストである『ヴァーキヤ・パディーヤ』全巻の主要語彙コーパスを作成し、いくつかの鍵概念について分析研究を行い、「言語と実在」というテーマを設定して研究をまとめたが、この成果を、今年度開催されたの国際学会(国際サンスクリット学会、ヘルシンキ、7月)の「哲学・論理学」のパネルにおいて、The Epistemic Structure of Anumana in Bhart-hari's Vakyapadiyaとして発表した。このパネルは、インド論理学の初期の発展について集中的に議論する部会であったので、多くの有益な意見交換をすることができた。 2.今年度の主たる作業として目標とした、ジャガディーシャの『シャブダ・シャクティ・プラカーシカー』の全テキストのXMLテキスト化については、現在のところまだ、その方法を模索中である。理由は、昨年(平成15年)末に、XMLテキスト作成用の国際標準エディタとも言うべきVM2がフリーで公開されたこと。また、TEIによるテキスト・タグの国際標準化が、かなり整備された段階に来ているということ。この2点にある。我々が今後作成するXMLファイルもできる限り国際標準のタグにあわせて世界的に共有できることを目指す必要があり、本研究におけるXMLファイル作成は、その最初の本格的な試みと言うべきものであるので、本格的な作業に先立ってなすべき準備が多かった。しかし、XML化に必要な基礎的作業のノウハウは蓄積できた。
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