研究課題
基盤研究(C)
本研究の最終年度である本年は、ディーパンカラシュリージュニャーナ(982-1054)が築いたラムリム思想のチベット仏教における展開を中心として調査を行った。チベット仏教においてこの思想の基盤を作ったのがディーパンカラシュリージュニャーナとその主著の『菩提道灯論』であり、それを展開したのがタクポ・カギュ派の開祖であるガムポパ・ソナム・リンチェン(1079-1153)とその主著の『ラムリム・タルゲン』であり、それを大成したのがゲルク派の開祖であるツォンカバ・ロサン・タクパ(1357-1419)とその主著の『ラムリム・チェンモ』である。まずガムポパ・ソナム・リンチェンの『ラムリム・タルゲン』におけるディーパンカラシュリージュニャーナのテキストの引用例と彼に対する言及について調査を行った。本論は、ディーパンカラシュリージュニャーナの『菩提道灯論』に対する注釈書ではないものの、同論からの多くの引用が見られることからも、本論は彼の『菩提道灯論』の影響の下で著されていたことがわかる。この研究成果については、5月に韓国の中央僧伽大学において開催された韓国仏教学結集大会において研究発表を行った。つづいて、ツォンカパ・ロサン・タクパの『ラムリム・チェンモ』におけるディーパンカラシュリージュニャーナのテキストの引用例と彼に対する言及について調査を行った。本論は、その冒頭にディーパンカラシュリージュニャーナの小伝を記しており、またその内容構成が『菩提道灯論』とほぼ同じであることから、ツォンカバが同論を下敷きにして本論を著したのは明らかである。しかしながら、本論におけるディーパンカラシュリージュニャーナへの言及とそのテキストの引用を詳細に見てみると、「菩提心」に関するセクションに多く見られるものの、ツォンカバ独自の思想的議論が見られる「観」に関するセクションではあまり言及されていないことがわかる。このことから、ツォンカバは本論を著す上で『菩提道灯論』の影響を受けたものの、彼の思想形成にはあまり影響を受けていないように思われる。またこの他に、チベットにおける『菩提道灯論』の注釈書のうちチョーネ・タクパ・シェードゥップ(1675-1748)とパンチェン・ラマ6世によるものについて研究を行った。前者はその解説がパンチェン・ラマ1世(1570-1662)による注釈とほぼ同一であり、後者もその構成などが一致しており、チベットにおける『菩提道灯論』の多くが注釈がパンチェン・ラマ1世のものに基づいて著されていることが明らかになった。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (10件)
印度学仏教学研究 53-2
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身延論叢 10
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Journal of Indian and Buddhist Studies 53-2
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Bul gyo hak yeon gu (Journal of Buddhist Studies) 9
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