シャルパンティエ(Jarl Charpentier)の校訂本を底本として、『ウッタラッジャーヤー』(Uttarajjhaya)の前半部分、第1章から第20章までを順次和訳した。和訳をするに当たって、まず、これまでに公刊されているSutta AgameやVaidya等による諸刊本を比較参照し、韻律学の視点から詩節の読みを検討し、異読(variant readings)に基づいた新しい読みを提示した。また、アルスドルフ、ノーマン、ボレー教授等、先学の清新な読み(異読)も批判的に検討した。 また、『ウッタラッジャーヤー』にみられる未解読で難解なアルダ・マガダ(Ardha Magadhi)語彙を語源学的に考究した。ロイマン、ヤコービ、アルスドルフ、ノーマン、ボレー教授等ヨーロッパ人学者、それにA.M.ガテギやS.N.ゴーサル等のインド人学者の精密な関連研究を参照することによって、あるいは『スーヤガダンガ』をはじめとする最古層に属するジャイナ教聖典群、それに『スッタニパータ』、『ダンマパダ』、『テーラガーター』、『テーリーガーター』等の最初期仏教文献にみられる並行詩節(parallel verse)や並行詩脚(parallel pada)によって、これらのアルダ・マガダ語彙を、中期インド・アリアン語(MiddleIndo-Aryan)の視座から解明することを試みた。その際、並行詩節や並行詩脚を見つけるのに、先に出版した初期ジャイナ教聖典と初期仏典の語彙索引と詩脚索引を有効に活用することができた。そして、アルダ・マガダ語彙の正確な語源を提示し、できうる限りマハーヴィーラやその直弟子たちの原意を汲むよう和訳を試みた。 現在、『ウッタラッジャーヤー』の後半部分を一詩節ずつ慎重に和訳し、韻律解析、和訳と語源学的注記を各章ごとに作成しているところである。
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