本研究は三年間にわたってジナバドラ作Visesavasyakabhasya(以下VA^^-Bhと略す)を中心に、その前後の文献にも配慮しながら研究活動を行った。その結果、当初の目的にそった成果を挙げることができた。この成果は大きく分けて以下の2つに纏めることができる。 1 まず前二年間でVA^^-Bhの仮説的本文を作成した。これには様々な形態の文献等を利用した。仮説的本文は内外の研究者に回覧する共に、研究代表者自ら検討し最終的な本文を作成した。更に、この本文を電子化する作業を行った。従来は冊子態でのVA^^-Bhのみであったが、時代に即応した形態で、かつ厳密な本文をもつものが出現した。これによってVA^^-Bh本文に現れる単語や語句の検索が容易に行えるようになった。またこれまで偈文の索引は存在したが、上記の電子化によって半偈単位での検索が容易にできるようになった。 2 次にVA^^-Bhを引用する文献、引用場所、引用されるVA^^-Bhの偈文番号および異読の有無を記載する表を作成した。検討した文献はジャイナ教聖典への各種注釈が主であるが、いわゆる哲学期における各種文献も調査した。これによって後代におけるVA^^-Bhの引用に一定の傾向があることが判明した。つまり、認識論を論じる部分からの引用および業論に関する文の引用が圧倒的である。また、この引用表を利用することで作成した本文の読みを確認することができた。 なお付随的に偈文番号の相互関係表を作成した。現在使用されているVA^^-Bhの刊本の偈文番号にはかなりの相違があるので研究書で言及されている番号は偈文が同じでも異なる場合が多く、とまどうことがある。この不便さを解消するためのものである。
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