既発表・発表予定の刊行物は、おおよそ以下の主題を取り上げて議論したものである。 1、エリアーデの伝記的資料と、その他の研究者による諸文献に見られるルーマニア時代の活動のうち、コドレアヌのレジオナール運動とのかかわりに関する議論を論じる上で前提となる、基礎的な概要の把握を目指したもの。これに関しては、特にリケッツの著書(1988年)の扱いが大きな問題となっている。 2、エリアーデがパリに移動する以前から関心を抱いていた、シャーマニズムに関する研究史のなかでの、エリアーデの研究の位置づけを試みたもの。これはとりわけ1930年代以降のシロコゴロフ、ハルヴァのシャーマニズム研究に加えて、日本人研究者、赤松智城・秋葉隆の研究にも照らした位置づけの試みである。 3、エリアーデの青年時代からの小説執筆への取り組みとの関連で、「聖なるもの」の概念が彼の学問的活動のみならず創作活動においても占める位置についての検討と、特に「聖なるものの偽装」という概念の意義についての考察。加えて、こうした視点がその他の作家(ここでは大江健三郎を取り上げた)への影響に関する研究。 4、エリアーデの宗教学方法論のうち、しばしば解釈学として言及される、他者との対話の位置づけに関する検討。これは彼の現代という時代に関する認識を背景とし、その時代における宗教学の意義に関する主張にまで至る。 これらの研究をもとに、さらに本研究の主題であるエリアーデ宗教学の形成前史を、リケッツ以降のエリアーデ研究についての検討を進めていく予定である。
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