平成14年度、主に豊橋、豊川近辺の祭礼および寺社の資料収集を中心に行った。豊川、豊橋近辺の祭礼で鬼が出てくる事例は現在確認されているだけで19例。しかし、未確認の地域がまだ存在することが知られている。そのため、事例収集にはまだ時間がかかる見込み。また、祭礼が同一日に重なって行われているため、申請者が確認できたモノは6例にすぎない。しかも、春に限って行われるところと、秋のみのところ、また双方で行うなど未確認のところが多く、充分に把握できていない。 しかし、鬼が出てくる祭礼を有する神社は主として素盞鳴神社であり、豊橋の鬼祭で有名な安久美神戸神明社、石巻神社などは希な事例と見ることができる。だが、これらの神社名は明治5〜6年に変更されたものが多く、一概に論じることはできない。また、明治期にこの「鬼」をはじめたと言うところも耳にすることがある。しかし、一時にこの種の祭礼がどこかから継承され、行われたと考えるには問題も残る。 このほか、笹踊りもこれら神杜での祭礼で見ることができるわけだが、顔を隠し、大きく足を挙げ、大地を踏みしめるこれらの動きをも花祭などで見る返閇という鬼の所作の中に含めて考察することができると考えている。申請者はこれらの祭礼の背景に鉄の文化が存在するのではないかという仮説を有している。そのためにはさらに静岡、岐阜、三重などでの資料調査の必要が生じてくると考えている。
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