研究課題/領域番号 |
14510041
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
倫理学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 巍 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (70012515)
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研究分担者 |
三嶋 輝夫 青山学院大学, 文学部, 教授 (80157479)
天野 正幸 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (40107173)
今井 知正 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50110284)
荻野 弘之 上智大学, 文学部, 教授 (20177158)
岩田 靖夫 仙台白百合女子大学, 人間学部, 教授 (30000574)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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キーワード | 徳 / 理性・欲求・気概 / ソクラテス・プラトン / アリストテレス / 自己・他者 / 偶然 |
研究概要 |
人間に「なすべし」「なすべからず」と倫理的義務を課す権威は現代では失墜しつつある。神信仰は退潮し、親や教師、社会の権威も空洞化しつつある。これから一層そうなるであろう。個人がどのような価値づけよりも優先権を持ちつつあるからである。そうした時代にあって、外的権威からの義務感ではなく、個人自身が、いかなる人間になりたいのか、どんな人となりとなって人生を生きたいのか、を吟味洞察することを生き方の中核におく古代ギリシアの徳倫理学は一層重要な意義をもつことが明らかになった。制度と法律によって公害のない理想社会が実現したとしても、個人による私害があり得るように、個人自身が善く生きることがなければ社会も最終的には善くならない。社会を善くするための胡乱な回り道にも見えるが、シクラテス・プラトン・アリストテレスの倫理学の根本もそこにあった。 欲求は自分のものでないものを自分のものにしたいということであり、気概は自分のものであるものへの気遣いであって、自分のものの領域(自分の国家、会社、家、地位、財産、名誉など)が侵犯されると恐れまた怒る。しかし理性は自分のものではなく、自己自身に関わる。そして徳はその理性が欲求と気概を調和ある仕方で統合し、他者と社会に対して応答する能力(責任)である。その能力を人が自分自身に開発して、他者と共生することを愛する人となりを自分で自分に作ることができ、そしてそれが偶然性に曝されて傷つきながらであっても、自己を高め充実開花させることであること、これが特倫理学の真骨頂であった。
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