研究概要 |
1、「公共性」に関する概念分析的考察を進めた。public=officialといういわば表層的規定を排してopen, commonという本質点から見るなら、「公共性」の基本類型として、1.経済的公共性、2.倫理的公共性、3.政治的公共性の三類型への区別が可能かつ必要であることを明らかにした。(これは同時に、そもそもの「経済」「倫理」「政治」-これは、人の活動領域というよりむしろ活動形態上の区別である-の相互区別・規定を前提とするが、これについてもオリジナルな整理が提示できたと思う。さらに、「政治」について、自由主義的、共和主義的、共同体主義的への三分類が有効であることも明らかにした。)その際の分析視角は、「申請書」に記した「倫理的還元」である。この研究成果は6,9月に研究会で口頭報告し、併せて、現在出版作業を進めている共編書『公共性の哲学を学ぶひとのために』(世界思想社)の「序論」において2004年度中に公表する予定である。また、本書第一部の構成には上の三類型化が反映されている。 2、いわば応用的研究として、環境問題(という「公共的」問題)に関わるものとして、昨年度報告したものの続きを、裏面で挙げた論稿として公表した。本論稿の最重要のポイントは、「便益」(効用)概念の再検討を前提に、便益の種類の別に応じて、「持続可能性」と言われる場合の「持続性」を類別化するとともに、それぞれの「持続性」を原理とするものとして「倫理」-この場合、上の三分類中のものに対しては、「倫理的還元」の場合と同様、いわばメタ的な上位概念を意味する-を類別化したことである。 3、同様、応用的研究として、(公共性を支える人問の育成としての)「公民」教育について、2004年度中に刊行予定の論集に論稿を執筆した。また、10月に学会ワークショップで口頭報告した。
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