研究概要 |
本年度は、共同研究者各自が自らの従来のテーマを発展・深化させることに主として専念しつつ、それらを相互理解の場に提供した。また,出雲地方の現地調査を行い,フィールド・ワークの一端に理解を深め,<景観>研究のあり方を模索した。以下は,個別の具体的な研究経過である。 豊澤は、近世初期の儒家神道に隠然たる影響を及ぼしたのではないかとされるキリシタン思想をめくる問題に関する研究ノートを発表した。また,儒家神道である垂加神道を創始した山崎闇斎の尊貴なる「自己」と,出雲神話の<物語>(『日本書紀』)との関係について考察を進めた。 上原は、日本の神についての<物語>が,『古事記』以降どのような変遷を辿りつつ現代まで影響を及ぼしているのかを「悪」というキーワードを軸に考察し,その成果を公開講座で講義し,その概要を紀要に発表した。また蒐集した文献を参考にして,最澄の思想における比叡山という<景観>と『法華経』という<物語>の倫理思想的役割について,原理的な考察を進めた。 柏木は、『今昔物語集』巻第十六及び第十七を採り上げ,諸菩薩・諸天霊験譚,すなわち,菩薩や天と人々とが出会い,のちに別れる出来事を再構成する<物語>のうちに,聖と俗との交渉をめぐる古代末期の思想の一様相を探った。 木村は、『古事記』『出雲風土記』に見られる出雲の<景観>にまつわるエピソード(<物語>)と場所との関連について考察を行った。特に,大国主命の傷を癒すという病気治療に関わり、出雲地方が古代から薬草文化な豊かな地域であるという点に着目し,植物との関連について特に検討している。
|