研究概要 |
本年度も、引き続き、共同研究者各自が自らの従来のテーマを発展・深化させることに主として専念しつつ、また、出雲地方の現地調査を続行した。聖なる景観についての仮説が徐々にできあがりつつある。 上原は、出雲の景観調査をもとにして、神社の立地条件のパターン化を試み、神体山というランドマークのペア性についての仮説を立て、それを実証すべく景観データ分析を行った。また、紀要論文で『古事記』の三輪山神話を取りあげ、神話という<物語>と神体山というく景観>の相互関係について論じ、神の観念がどのような自然観と自然環境を生み出していたのかを考察した。 柏木は,神仏習合思想に基づく説話を採り上げ,聖なる存在をめぐる思索,またその形式としての<物語>について検討した。『神道集』のいわゆる物語的縁起のうち,とくに主人公が神や仏・菩薩の申し子でない場合について,人から神への超脱を促す資質・経験,超脱以後の変容を貫く動機を抽出し,説話を媒介とする神・人相互関係についても考察を試みた。 木村は、ランドスケープと物語の関係がどのように取り上げられてきたかを調べるために、今までの日本の宗教学研究における神話研究の位置を考察した。その成果を「What are outside and inside myth : the Japanese study of myths」と題する論文にまとめ、11月にアメリカ合衆国アトランタ市で開催されたアメリカ宗教学会で口頭発表を行った。引き続き、出雲神話における景観や場所の記述に仕方について研究を進めるとともに、昨今の空間論、景観論の研究も行っている。 豊澤は、研究全体を統括しつつ、出雲神話が中世・近世においてどのように理解されたかの考察を進めた。
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