今年度は、革命以前のロシア的福祉国家形成の動きを、ロシア宗教思想との関連において検証することをめざした。そのため、8月に3週間のヘルシンキ大学図書館において、資料調査を実施した。調査において、当該時期のネオ・プラトニズムの影響をしめるいくつかの貴重な資料を収集することができた。これら資料にもとづいて、研究会「プラトンとロシア」を立ち上げ、3月には札幌にて研究報告会を実施した。私は報告「ロシアにおけるプラトニズム」を行った。報告は、平成16年夏に論文として刊行予定である。 これと平行して、ウラジーミル・ソロヴィヨフの宗教哲学とロシア自由主義との関連のもんだいを研究し、平成16年2月17日に開催されたロシア思想史研究会年次総会において「ウラジーミル・ソロヴィヨフにおける『自然』」と題する報告を行った。報告は平成18年度秋に刊行予定である。 また、ロシア福祉国家論とスラヴ主義との関連についても研究をすすめ、論文「K.D.カヴェーリンとロシア的福祉国家」を執筆した。論文は『ロシア思想史研究会論集』として千葉大学より、本年度3月に刊行予定である。 さらに、北海道大学21世紀COEプログラム「スラヴ・ユーラシア学の構築」の事業推進者の一人として、その予算により、モスクワにて資料調査を実施し、ロシアにおけるプラトン研究の現状に関する資料を収集した。あわせて、若手研究者を組織して、ロシアにおける政治思想の現状を分析する研究会「ロシア政治思想研究会」を設立した。
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